オーストラリアと日本人ハーフモデルのパリコレ体験記(2/2)

1月1日に日本を出て、同日夜にパリに着いた。

前回も書いたように、パリコレのオーディションは2日から始まった。
こんな調子で事務所からオーディションの予定表が届く。一日に10件くらいある日もザラだった。大体10時に始まって6時に終わるところが多いので、前日に事前に回る順番を決めて回っていた。

オーディションに向かうとそこにはオーディション待ちのモデルがズラーっと並んでいる。パリコレには約400人くらいのモデルがオーディションを受けに来ていて、各々順番を決めてオーディション会場を回っているのだ。オーディション会場についたら、まずはコンポジットカード(通称コムカード)というのを提出する。


これが僕のコムカードだ。

オーディション会場についたら列の最後尾に付き、自分の番が来るまで待つ。運が悪くたくさんモデルが集中している時間に行ってしまったり、モデルがたくさん並んで待っているにも関わらず、担当の人が「ちょっと腹減ったし、疲れたからランチブレイクしよか!」とかいってどっかに行ってしまうこともあって、2時間弱待たされたこともあった。

ただ、このようにどれだけ待たされても、オーディション自体は一瞬で終わる。オーディションで何をするの?っていうのはよく聞かれるが、ただ歩くだけである。10mくらいの距離をショーのキャスティング担当の人の前で往復する。それで終わりだ。

気に入ってもらえたときはその場で、用意されている服を着るが、そもそもオーディションには服が用意されていないブランドが多く、ほとんどの場合はその一瞬で終わる。

オーディションが終わると大体は、担当の人が「ありがとう。それではまた。」とか言ってくれるのだが、中には全然相手にしてくれない人もいる。

10m先にいる相手に向かって歩いていって、目の前まできたら振り返り、元の場所までまた歩いて行く。歩ききったので再び振り返るとスマホを触っていて、俺のことなんて全く相手にしてなかったりする。これはつまり、ダメです、っていう意味で、周りにいるアシスタントさんから「ありがとうございました…」といわれる。

「おい!!!!!ちゃんと見ろよ!!!!」

ともいえず、そのままオーディション会場をあとにする。こんなこともありながら、オーディションが続く日々を4日ほど毎日繰り返した。

オーディションで気に入ってもらえると、再びフィッティングに呼ばれてショーで実際に使われる服を着る。そこで再び気に入ってもらえればショーが決まると言った流れだ。その結果がわかるまで1週間ほど休みがある。その間に多くのモデルはミラノのファッションウィークに行くのだ。

ミラノに行く予定がなかった私はパリに残り、いくつか撮影をした。
その一つがこれだった。

骨折した時に巻く布を体中に巻かれ、この姿勢で固定された。骨折したことなかったので知らなかったが、骨折時につけるギブスは濡らすと固まる布を何重にも巻くことで出来ている。僕はこれを一時的ではあるが全身に巻かれた。

そしてこの状態でアートディレクターの人が一言。

「お前はブッダだ!!」

受け入れがたい発言に苦笑いしつつ、この2時間くらいこの状態のままで撮影をした。撮影は「KING KONG MAGAZINE」という雑誌のもので、これをググってみると、あんな撮影をした理由がわかった。てか事前に見ておくべきだった。

あとは普通の雑誌の撮影などを行い、再びオーディション結果を待つことになった。

ショーの結果は本番前日になって初めてわかる。本当にギリギリだ。パリコレは、私がまだパリショーにでれるのかわからない状態で既に始まっていた。本当に不安だった。しかしこんなギリギリの時期でも、ショーのオーディションはまだあって、ひたすらオーディションを周っていた。

そこまで来ると、まだショーに出れていないモデルたちが明らかに焦っているのがわかる。初めてあったときは「僕はオリバーだよ、よろしくね。お互い頑張ろう。グッドラック!」とか言ってたモデルが、オーディション会場で「デザイナーの雰囲気は?歩き方の好みは?どういうモデルが好みなのかな?」など、オーディションを終えたモデルに質問攻めしている光景をよく目にした。みんな最後のチャンスを何がなんでも手にしたいのだ。最初はきっと出れるだろうと思いながら気楽にオーディションをしていたのに、この時期になって未だに結果が出ていないことに参っているようだった。

この状態から私が抜け出せたのは1月21日だった。パリコレは22日までなので最終日前日のことだった。夜9時頃に事務所からThom Browneのショーが決まったメールがきた。最後の最後でなんとか間に合って肩の荷が降りた。こうして無事ショーに出れることになった。

ショーの会場についてみてびっくりしたのそのは会場の大きさだった。舞台裏の広さが日本のショーよりも遥かに広かった。ここに約80人のモデルの衣装が準備されている。

会場に着いたらまずはヘアメイクを行う。今回はヘアはセンター分けのオールバックで、メイクは白地に黒のリップだった。それが終わる衣装を着ることになる。


ヘアメイクのお兄さん
今回出演したThom Browneのショーのテーマは「馬」だった。僕たちは馬の蹄をイメージしたこの靴を履いた。

これは中がヒールになっていて履いているだけで非常に疲れた。加えて馬の頭をイメージした被り物までした。これらを着て、まずはショーのリハーサルを行う。本番の流れ、歩くコース、歩き方などを細かく指定され、それが出来るまで練習するのだ。

リハーサルが終わると後は本番までメイクや服などの細かい修正を行っていく。近くで見てもわからないようなシミを抜いたり、服についた毛玉を取り除いたり、黒のリップを塗り直したりする。そのような作業が全てのモデルに対して行われる。最善の状態になるまで、僕たちはヒールを履いて被り物をつけたままずっと待たされる。

準備が整うと、待ちに待ったショーが始まる。大勢の観客がいる中で、リハーサル通りに指定されたコースを歩き、舞台裏に戻っていく。ショーはそれだけで終わってしまうので、準備時間と比べると本当にあっけない。これが実際、僕がショーで着たものだ。

ショーが終わるとモデルたちは信じられないスピードで帰っていく。着ていた衣装を一瞬で脱いで30秒くらいでメイクを落とし、気づいたら半数以上のモデルがもういなくなっている。このようにしてショーが完全に終わる。

とにかく、1ヶ月かけて得た体験は本当に貴重なものだった。

せっかくだからやってみよう、と思いついて実際に挑戦してみて本当に良かった。

よく考えたらまた来年の1月もチャレンジできるので、機会があればまた来年もチャレンジしてみたい。

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