路上園芸の分類:魅せるガーデンと飼うガーデン

僕は実家が日本橋の人形町にあります。海外に住んでいた数年を除いてもうここには18年間は住んできました。人形町はなんといっても路地がとても多いです。路地の中では住民の様々な生活物が家の前にあふれ出すように置かれていて、そこには狭い空間の中でいろんな工夫が行われています。

路地空間で行われる工夫から感じる路地の魅力

いろんな生活物の中でも自分が特に惹かれるのが路上園芸です。それはなぜなら生活物の中でも特に管理者の心理やこだわりを見ることが出来るからです。

そして路上園芸を観察し続けていると、どうやら見た目が優先される「魅せるガーデン」と一見無造作に見えるけど動物を飼うように植物を育てる「飼うガーデン」の2つに分類することが出来るということがわかってきました。今回はそれを紹介していきます。

路上園芸とは

人形町ではいたるところに園芸空間があり、それらは塗装された地面の上で植木鉢のような容器に入れられて行われます。一般的に庭と呼ばれるような場所とはそこが違う。路地の中では庭を構えるスペースが無いので、鉢植えの集合体がその代わりを担っています。

路上園芸を支える管理者

路上園芸を支えているのは、なによりその管理者です。放って置いたら枯れてしまう植物を枯らさないように毎日水をやり、見た目が綺麗に保たれるように雑草を抜き、必要な場合は植物の生育のサポートまでします。

そして大切に管理した植物を守る工夫も努力も管理者は怠りません。鉢植えごと植物が盗まれることを防ぐために、柱に結びつけたている光景も人形町ではよく見かけます。通りすがりの泥棒に愛情を注いだ植物を盗まれるもんかと、鉢植えごとまでは言わずとも、花を切ったり枝を折らないように注意書きを置いている管理者もいます。

背景に働く心理

路上園芸について人形町の住民に話を聞いてみるとその背景には様々な心理が働いていることがわかります。園芸はただ植物への愛情で行われているわけではないのです。

生き物を保護するために

ここを管理するKさんは近くの公園で捨てられていた植物を貰ってきてはそれらが死なないように育てていました。ここでは観葉植物が多かったのですが、それはおそらくもともと家の中にあったのが人形町から引っ越す時に捨てられてしまう植物が多いからです。Kさんにとっての園芸活動は捨てられた生き物を保護してあげるという心理のもと行われている行為でした。

道行く人に見てもらうために

人形町にもう60年以上住んでいるOさんは一つ一つの植物に対してただならぬこだわりを持っていました。Oさんはお花が好きすぎて近所のお花屋さん、百貨店、ホームセンターのいずれかに毎日足を運び、自分好みの鉢植えを毎日選定しているといいます。少しでも気に食わなければ買うことはなく、その究極の一つを見つけるために時間をかけることを厭わないようです。

このようにOさんは植物への愛情は大前提としてあるのですが、同時に「通りすがりの人が褒めてくれることがなによりも嬉しい。そのために頑張れる」ということをおっしゃっていました。そう言ってくれるのは近所の知り合いの場合もあれば、全く知らない人の場合もあるといいます。Oさんにとって自分が愛情をもって立派に育てた植物を道行く人にみてもらうことが園芸を行う強いモチベーションとして園芸を行っていました。

人形町でガーデンを見つける

こうして路上園芸を見続けていると時折、ただ鉢植えが並べられているわけでなくて、園芸を行う人が意思をもってその空間に秩序を与えようとしているとしか思えないような空間に出くわすことがあります。花の選び方や鉢植えの置き場所、高さのバランスなどが周りの路上園芸とはすこし違うのです。私はこのような路上園芸の中でも秩序が感じられるまとまりのことを「ガーデン」と呼ぶことにしました。

そして人形町ガーデンには2つの傾向が現れます。。それは道行く人に自分の園芸活動を見てもらうために美しくデザインされた「魅せるガーデン」と、一見無造作に見えるものの生き物を飼うように愛をもって植物が育てられている「飼うガーデン」です。

魅せるガーデン

鮮やかな色で彩られ、植木鉢の配置までこだわっている。日々の手入れを欠かさず美しい空間を作り上げているような園芸を私は「魅せるガーデン」と呼んでいます。

鉢植えの仮設性

魅せるガーデンでは、植木鉢の仮設性という特徴が顕著に現れます。美しい見た目を保つために植物の中でも特に花が重視されるため、花期に合わせて2,3ヶ月おきに時期が過ぎた花を植え替えるか、鉢ごと捨ててしまうなどして、新しい植物が迎い入れられる新陳代謝があります。

高さのグラデーション

遠くから見ても全ての植物がバランス良く見えている

魅せるガーデンでは鉢植えの配置も工夫されます。前から後ろにいくにつれて鉢植えが置かれる位置が高くしていくことで、全ての植物が隠れずにバランス良く見えるようにしてあり、そこには愛情をもって育てたものを見て欲しいという意思が感じられます。

街の花屋の魅せ方

花屋は「魅せる」ことに特化している

花屋は町一番の魅せるガーデンです。花屋に置かれた植物は綺麗で立派。どれも当然商品として並んでいるため、品質を保つために気温や室温は一定に保つことで管理も徹底しています。

また花屋の鉢植えは仮設性が高く、売り出したい植物は前面に押し出され、それが売り出される度に後ろの植物が前に動かされるような流動性を保ちつつ、全ての植物をバランス良くみせる高さのグラデーションが共存しています。

飼うガーデン

一見無造作に見えるのだけど、よく観察すると植物を育てるための工夫が散りばめられている。私はそんな生き物を飼うように植物を育てる園芸空間のことを飼うガーデンと呼んでいます。ここでは魅せるガーデンとは違って見た目は優先されずに植物を生かし、育てることが何よりも大切にされています。

鉢の多様性

植木鉢と発泡スチロールの共存

飼うガーデンの鉢植えは多様です。ペットボトルや発泡スチロールが一時的に鉢として動員されることもあれば、ずっとそのままにされることもあります。これも植物を生かすためなら手段を選ばないことの表れで、見た目が重視される魅せるガーデンではみることができない光景です。

成長の手助け

フジが絡まる場所を作ってあげている

飼うガーデンは植物の成長の手助けが率先して行われます。見た目よりも健康に丈夫に育てることが優先されるため、支柱で支えたり、フジのような蔓性植物が絡まる場所が整えられます。

同種の株分け

株分けされたヤブラン

成長した植物はしばし株分けされ、新たな鉢を与えられます。飼うガーデンの中では同種の植物を数か所で見かけけることがありますが、それらは株分けされた結果です。

まとめ

この記事はあくまでの路上園芸の見方の切り口を紹介したものです。人形町における園芸空間について書いたので他の地域ではもっと別の見方が出来るかもしれません。

そして何より、魅せるガーデンと飼うガーデンの2つを紹介しましたが、これらは完全に分かれているわけではありません。どんなガーデンにも「魅せる」と「飼う」の要素が混在していて、それらが組み合わさってガーデンを構成しています。分類する方法は2つのうちどちらがより強く現れているのかということに過ぎないのです。

このブログを読んで少しでも路上園芸が気になったらあなたも街に出かけて路上園芸を観察してみてください。

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